1 文書管理の概要

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(1)文書の定義

一般には「紙に書かれた情報」「人の意思を文字又は、符号などで表した紙」といわれ、公文書は「公務上処理しなければならない文書」とか「公務員がその職務を執行するために作成する文書」とされ、古くから紙を媒体としていたが、2000年頃からの情報通信技術の発展により、電磁的記録が多く用いられるようになってきた。

学校は「教育」という、一般企業や官庁と異なった経営目的を持った機関であり、官公庁でいう公文書以外に校内で作成され、研究されたものが資料として多く作られ、教育実践に活用されているという特殊性からみて、学校における文書は、一般の公文書にこだわらず「教育目標達成のために必要なすべての文書」として位置づけられる必要がある。

(2)文書の特質(性質)とその効用

① 文書の特質

ア 保存性……文字や記号・符号によって書かれた紙やデータが書き込まれたCD-Rなどは、口頭に比べて長期にわたって保存することができ、いつでも利用できる。

イ 的確性……口頭では誤って伝えられたり、長時間には記憶が薄れ正確さを欠き易いが、文書は文字が固定しているため、内容に確実性がある。

ウ 普遍性……文書は、受けるものの感情に左右されにくく、特に感情に支配されない。

エ 伝達性……文書は、広範囲にかつ、時間を超えて意志や感情を伝達することができる。

② 文書の効用

文書は、その性質を生かすことにより、次のような効用(機能)がある。

ア 現状の把握……文書を管理することで組織活動の現状をとらえることができる。

イ 対象の代表……文書は、企業や機関を代表する。抽象的な権限とか、資料を具体的に表し、文書それ自体、権限や資格を示す。

ウ 証   拠……文書は、その保存性と的確性とにより、事実についての証拠力が高い。

エ 統   制……文書は、仕事の経過と結末がはっきりするので、企業や機関を統制するのに役立つ。

(3)公文の種類

公文とは、公の機関又は公務員がその職務上作成した文書をいい、長野県では公文の種類を、令達文・公示文・一般文の3種類に分類し、それぞれの種別を定めているが、これを図示すれば次のようになる。

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(4)文書管理

組織体の活動は、その大部分は文書を通じて発生し、組織体の活動と文書を切り離すことはできない。文書の管理とは、文書の運行の統制を意味するもので、組織体の近代化・合理化の根底である。

学校における文書管理の範囲は、公文書はもちろん、教育活動の過程において発生した文書・研究物・資料、又、外郭団体等のものでも学校運営に必要な文書・資料をその対象とする必要がある。

文書管理とは、通常、文書の流れを管理する面(動態管理)と、文書を保存管理する面(静態管理)の二面がある。

① 文書の動態管理…文書の流れの管理

文書の流れの管理は、文書の収受から起案し、決裁を経て発送に至る組織内における文書の流れの統制管理であり、流れの過程に必要な様式・用字・用語・機械器具の管理なども含まれる。

ア 文書の収受及び配付

文書の受領・公用私用の区分・収受印押印・文書の分類・文書件名簿登載・閲覧を経て担当者へ配付する。

イ 文書の作成

文書は、起案・合議・決裁を経て作成する。起案に当たっては、資料を収集し、構想を立て、要点を明確にし、形式・文字・用語に注意し、手書きの場合の文字は、丁寧に書かねばならない。

ウ 発  送

発送に当たっては、正式な手続きが経られているか確認するとともに、文書が相手に届く最も合理的な方法で発送する。

② 文書の静態管理…文書の保存管理

文書の発送から保管を経て、保存・廃棄に至るまでの管理であり、完結した文書(記録)が資料・証拠として能率的に活用されるよう保存されることで、文書の分類・整理・保管・保存利用・廃棄等が主なものである。

ア 文書の分類……文書の分類基準表により分類する。

イ 文書の保管……文書が完結してから保存期間に入るまでの状態をいう。一般には完結の年度が終了するまでの間の文書の状態である。

ウ 文書の保存……文書の保存期間を終了してから、廃棄に至るまでの状態である。

エ 文書の利用……保存文書を資料等として活用することである。

オ 文書の廃棄……保存期間が満了、又は、保存期間中でも保存の必要のなくなった文書を処分することである。

③ 文書の集中管理

文書の静態管理の方法は次の3つの方法がある。

ア 集中管理……職員室・事務室等一か所で組織的統一的に管理する方法

イ 集中的分散管理……主に職員室・事務室に置き、一部を保健室・校長室等に分散管理する方法

ウ 分散管理……それぞれの係ごとに保管する方法

文書は、組織の活動を促し統制し、次の計画を作らせる機能を持っている。この機能を十分、効果的に活用するためには、特定の係の私物としてではなく、組織的に管理し、いつでもだれでもすぐに利用できる状態にしておくことが必要である。そのためには、文書の集中管理(集中的分散管理)が理想的であると思われる。

④ ファイリング・システム

文書の集中管理の最も効果的な方法は、「ファイリングシステム」だといわれ、ファイリングシステムとは「組織の維持発展のために必要な文書をその組織のものとして、必要に応じ、即座に利用し得る形で組織的に管理保管し、ついには廃棄に至る一連の制度である。」と定義されている。

⑤ ファイリングシステムに必要な要件

ア 全職員が十分理解すること。

ファイリングシステムの必要性、目的を全職員が十分理解するとともにこのシステムは各自が研究・努力して作り上げていくものであるという意欲を持つこと。

イ 全職員が決められたことを守ること。

ウ 文書を絶対私物化しないこと。

職務に関連し作成又は、収受した文書は、市の公文書であることを十分踏まえ全員で利用できるように決められた場所に保管しておくこと。

エ 不要な文書を持ち込まないこと。

ファイリングシステムを実施すれば、必要な文書は、キャビネットにファイルされるから特別な場合を除き2部以上持ち込まないこと。

オ 文書は、必要以上の部数を作成しないこと。

文書を必要以上に作成すると必然的にあまり必要のないところに配付され、不必要な文書がファイルされることにもなるので、文書の作成にあたっては、必要最小限の部数で済ませるよう心掛けること。

カ 捨てる習慣をつけること。

ファイリングシステムは、文書を計画的に捨てる制度であるともいわれている。保存する必要のない文書は、思い切ってどんどん捨てる習慣をつけること。

キ 事務室に私物を置かないこと。

公私の区分を厳格にし、私物を事務室の用品に入れておかないこと。職務に関連ある参考文書は、机の引出しに入る程度にとどめる。

ク 退庁時に文書は机上に置かないこと。

当日行う仕事に必要な文書だけを机上に置き終わったらすぐキャビネットに戻すこと。したがって、退庁時には、文書を一切机の上に置かない習慣をつける。

⑥ 電磁的記録の管理

ア 管理の必要性

電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいい、具体的には、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスク、光ディスク等の媒体に記録された業務システム、データベース、電子メールなどである。

近年、文書事務に占めるパソコン、汎用コンピュータなどの役割が増大化してきており、文書規程上も電磁的記録は、文書管理の対象として明確に位置付けられている。

一方、電磁的記録は、何らかの措置を講じなければ、紙文書に比べ、改ざんが容易にでき、その痕跡も残りにくく、記録媒体の経年劣化などによる内容消失といった事故が発生しやすい等の特性を有している。

このため、電磁的記録についても文書規程等の規定に基づき適正に管理を行う必要がある。

電磁的記録の分類・整理から保存・廃棄に至る一連の事務処理は、おおむね紙文書に準ずるものとされているが、操作上の誤りなどにより記録された内容が滅失してしまう場合に備え、定期的にバックアップを取るなど、その特性に応じた必要な措置を講ずる必要がある。

イ 管理の方法

文書分類表に基づき、フレキシブルディスク等に保存する場合にあっては、ラベルシールによる整理を行い、ハードディスク等に保存する場合にあってはフォルダーの階層構造による整理を行う。

なお、電子メールシステムを使用して送受信した文書については、紙に出力して収受の処理を行い、その電子メール文書の処理に伴う他の文書とともに、文書規程に従い適正に保存する。

ウ 原本性の確保

電子文書(電磁的記録のうち、電子計算機による情報処理の用に供されるもの)の原本性について、電子文書であっても、次に掲げる3つの要件を充足していれば、原本として保存されている紙文書と同様の状態にあるものとみてよいとされている。

(ア) 完全性の確保

電子文書が確定的なものとして作成され、又は取得された一定の時点以降、記録媒体の経年劣化等による電子文書の消失及び変化を防ぐとともに、電子文書に対する改変履歴を記録すること等により、電子文書の改ざん等を未然に防止し、かつ、改ざん等の事実の有無が検証できるような形態で、保存・管理されること。

(イ) 機密性の確保

電子文書へのアクセスを制限すること、アクセス履歴を記録すること等により、アクセスを許されない者からの電子文書へのアクセスを防止し、電子文書の盗難、漏えい、盗み見を未然に防止する形態で、保存・管理されること。

(ウ) 見読性の確保

電子文書の内容が必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて直ちに表示できるよう措置されること。

(5)公 印

学校における公印とは、「学校印」と「職印」、「契印」、「割印」があり、特に重要なものは「職印」、「学校印」である。「学校印」は校名を、「職印」は校長の職名を明示した印章であり、文書の信実性及び公信性を表すもので、発信文書には、原則として公印を押さなければならない。ただし、軽易な文書はこれを省略することができる。

公印の取り扱いに際しては、厳正に取り扱うとともに、みだりに一般職員に使用させてはならない。また保管に当たっても盗難・紛失等のないよう確実に保管する必要がある。

① 軽易な文書はおおむね次のようなものであるが、文書主任及び校長の判断により決定する。

ア 図書・印刷物及び資料・広報等

イ 大部分が謄写又は、印刷に付した軽易な文書

ウ 一般的又は定期的な新聞・広報等

エ 請求書・見積書・届書等

オ 儀礼文

カ その他軽易なもの、校内発生の文書、資料